デブについて。

人を馬鹿にしたり、陰口を言うときに使う言葉、デブ。デブってどういう意味? と聞かれたら、太っている人のことだよ、と説明するだろう。しかし本当に、太っている人はみんながみんなデブなのだろうか。それは違う、と僕は思う。
ここに一人のデブがいる。やさしくて包容力があって、笑顔が絶えないようなやつだ。このデブがみんなに嫌われ、影でくさいだのあついだの言われるだろうか。いや、いわれない。それどころかみんなに愛される、そんなやつだろう。会話中に彼の事を「デブ」ということがあっても、その言葉の裏には愛があって、それをみんな理解している。もし彼はどういう人ですか? と聞かれても、「デブ」と答える人はいないだろう。...①
ここにもう一人の、アナザーデブがいる。先ほどのデブとは打って変わって、いつ風呂に入ったのかもわからないようなやつで、趣味はガンダム、って感じの。こいつは嫌われる、というよりきもがられる。クラスに同じようなオタクがいなければ、必ず孤独だろう。もしクラスにもう一人オタクがいれば、彼らは「閣下! 大変です!」「どうしたのだ!」などと気持ち悪い会話をするのだろう。パシリとかやらされるのはこいつらだ。彼らの評価を誰かに尋ねたとすれば、キモいとか、くさいとか答えるだろう。...②
ここにデブがいる。性格がどこかひねくれていて、会話をしているとなんだかムカついてきて殴りたくなってしまうようなやつ。これが「デブ」だ。「デブ」は人の話を聞こうとしない。「デブ」は自分が正しいと思っている。「デブ」は自分が良ければそれでいい。「デブ」は言い訳が大好き。「デブ」はうざい。「デブ」は調子に乗る。こいつはいつもどこかで陰口をいわれている。きっと普通の行動をしていても、「あのデブうぜえ」って言われるようなやつだ。でもそれでいて自分を改善しようとはしない。なぜなら自分が一番正しいからだ。...③
以上のことより、太っている人には、さまざまなパターンがあることがおわかりだろう。彼らは皆、「デブ」と呼ばれる場合がある。その「デブ」という言葉に反応して、「デブのすべてがすべてそういうわけじゃない!!」などと反応するやつは、その「デブ」の言葉の意味を理解できていない。そういうことをいうやつは、人権擁護団体の一員か、③のデブだ。「デブ」とは③のようなやつだ。人の話を聞こうとしないからデブ、自分が正しいと思っているからデブ、自分が良ければそれでいいと思っているからデブ、いいわけが好きだから……。逆に言うとそれ以外の人は、たとえ太っていても、それはデブじゃない。だから「太っている人にデブということは悪いことです」というのはまったくお門違いなことだ。
みんなに迷惑がられ、悪口を言われているデブは、太っているからデブといわれているのではない。「デブ」だったからデブだと言われているのだ。