手が震えてうまくメガネを渡せない。

髪の毛が邪魔すぎて涙がでてくるので、近くの理容室に行ってみました。いわゆるおしゃれ床屋です。そういうところに行ったことがなかったのですごく緊張しました。お腹痛くなりました。
お店に入ってみると、まずカットする人の髪型が、個人経営のおじさん床屋のそれとは全く異なりました。ポンキッキでいうならムックでした。
ーーああ、お店の外装をみた段階でおしゃれショップだとは想像がついてはいたが、これから店内で繰り広げられるであろうおしゃれ会話に耐え抜かなくてはならないのか
髪を切る際にもっとも恐ろしいことは間違いなく会話です。話題の引き出しの少ない僕は、スポーツ一切わからない、女の子とは無縁、おしゃれもさっぱりですーーといった具合でして、とにかく話すことがないんです。普通のこの年代の男子が興味を持つようなことに僕は疎いのです。いやはや本当にどうしようもない。
ーー今日もまた、何か話しかけられても薄気味悪い笑みを浮かべて「ぅぇ、そっ、そうなん……すか」「ぁ……そうですよね」なんて言わなきゃならない時間が始まろうとしているのか。
不安と緊張でガチガチになりながら僕の順番が来るのを待ちました。そしてついに「どうぞ」と声をかけられました。ああ、地獄じゃ、地獄が始まるのじゃ。


とまあ携帯なのでくどくどとこれ以上は書きませんが、結果を言うと、「どういう髪型にするか」ということ以外については一切話しかけられませんでした。
たまげましたね。おしゃれ床屋ってこういうものなのでしょうか。あの空間においては言葉を発することが間違ったことであるかのように感じられました。
いやあ素晴らしいところもあったもんだ。髪切るところが早くも決まって僕は大満足です。