そりゃもうイケメンだし

ありのまま今日起こったことを話すぜ。「左斜め前に座っていたイケメンの脇が濡れていた」。何を言っているか分からないと思うが、俺も頭がどうにかなっちまいそうだった。共感だとかそういうちゃちなもんじゃ断じてねえ。もっと素晴らしいものの片鱗を味わったぜ。


いやあびっくりした。ありゃどうみてもイケメンだよ。なのにTシャツか何かの上にシャツを羽織っていてなお、脇汗で染みてたからね。
それも、だよ。そいつが、なんていうの? 机の上に腕を重ねて頭を乗っけて寝る、っていうの? つまり脇が超オープンに晒される姿勢をとってたから、僕は「僕にはそんなかっこできないぜ。まったくこれだからイケメン……は……? あれ? 染み……、染みてる!?」となってしまったわけだ。ありゃ結構な染みだよ。思わず何回も確認してしまった。
「でもイケメンだから許されるんだろ?」
普段ならそう考えてしまう僕だけど、そのときは違った。感銘を受けた。すごいと思った。そりゃもう一つの希望にすら見えた。まさかイケメンにこんな風に夢を与えられる日がくるなんて想像もしていなかったよ。
僕もそんな風に堂々としてみたい。
できるんじゃないだろうか。僕にだってできるんじゃないか?
脇汗なんて気にしない、いや、湿った脇に対する人目を気にしないような、そんな自分になることができるんじゃないか!?


でも彼はイケメンだから許されてるんだよね。うん。