地獄ワズスターティド。

きたよきたよ。始まったよ学校。
僕みたいな人は朝は遅刻ぎりぎりで行く傾向があると思う。次の授業の準備をするのに何十分もいらないし、話す相手もいないもんだから、あんな苦痛な時間をすごすくらいなら、ぎりぎりに行ったほうがいいというものだ。今日もこれでもかってくらいぎりぎりの時間に家を出た。学校に着く前にチャイムが聞こえた。正直、遅刻だこれって思った。でもがんばった。自転車を止め、玄関へ走る。先生らしき人が、早くしろ遅刻だぞ、とか言ってる。僕が走っているのが見えないのか。
それでもなんとかセーフ。汗が少しでも引くようにつとめてゆっくり廊下を歩く。廊下を歩くとき、いつも目線にこまる。前を見て歩くと立ち話している人と目が合いそうになるし、かといって下を見ながら歩くとしゃがみこんで話している人ににらまれたりする。みんなは廊下を歩くときどこを見ているんだろう。
やっぱり汗はひかなかったけれど、教室の外で待ってるわけにもいかないので教室に入る。先生はやっぱり来てない。いつも遅れてやってくる。教室にはほぼ全員そろっているようだけど、漫画のようにみんなに挨拶されたりはしない。机の横に無造作に置かれたカバンが邪魔だなあと思うが、あ、どーもすいません、カバンまたいじゃってすいません精神で自分の席まで歩く。自分の席に座ってすこし安らぐ。あとは筆箱だして、一時間目の授業の教科書をだしたら、机の上で腕をクロスしてそこに頭をのっければいい。
先生が教室に来た。別にちっとも眠くない、それどころか極度の緊張状態だけれど、眠たさそうなジェスチャーを交えつつ頭をあげる。誰も見てはいないけれど、そうしないと不安でしかたがないのだ。先生が今日の日程について話す。別に緊張する場面じゃないが、脇腹を汗が伝う。朝のダッシュと教室の緊張ではやくもTシャツのワキを中心に濡れている。僕だって好きでこんな暑い日にTシャツ着てさらにその上にシャツを羽織っているわけじゃない。そりゃあTシャツ1枚だとかタンクトップだとか着たいけれど、そんなもの着た日にはワキを中心に同心円状に広がる染みが、胸のあたりで合体してしまうんじゃないだろうか。現在の僕の最高記録は、残り15センチで合体、ってところだ。最高記録っていっても、この季節なら、体育で外でサッカーとかやるとそれくらいすぐ行く。おかげで体育の時間も夏なのに上下ジャージだ。Tシャツで体育したいぜ。
先生の話も終わって、いわゆる大掃除だ。この時間は掃除すればいいだけだから助かる。友達同士で掃除もしないでしゃべってるのを横目に、せっせと床を掃く。あとは机を戻して椅子を下ろし、ゴミを集めて、捨てるだけ。なんでもいいけど、しゃべってばっかりいないで少しはやれよ。でもいいんだ。みんな協力して早く終わっちゃうと、大掃除の分の時間が余っちゃって、みんなでだらだらおしゃべりタイムが自然と生まれるからだ。そうなってしまうとかなりきつい。なぜか僕の席がやけに重たそうな女子に占領されていたりして、教室の壁にもたれかかって延々と時計をみることになる。もし僕の席が占領されていなかったとしてもきつい。みんな自分の席という殻を破って、好きな人の近くにいっておしゃべりするものだから、自分の席に座っているしかない僕は黙って前をみるか、寝る姿勢にはいるしかない。まあどっちにしろそんな時間はあってはならない。僕も手際よく掃除するなんて、自分の首を絞めるようなことはせずに、だらだらとこなした。なんでもいいけど終始おしゃべりしている人はすごいなと思う。先生に名指しで掃除しろと言われても、返事すらしなかったりだ。なんでもありだな。
そして授業がはじまる。授業は基本的に楽だ。座って黒板写すだけ。目立たないせいかあてられることも少ない。ただ英語の時間とかは、隣の子とペアになって読めとか、隣の子とペアになって文章作れとか無理難題な注文をつけられることがあります。隣の子が女子だったりするともうどもるし僕英語わかんないし汗かくしで最悪です。あとこれはいうまでもありませんが、体育の時間は、もう、ね。英語以上の厳しさ。英語ならまだ隣の子とか結構指定してくれる率高い。でも体育はそれない。いつも自由。フリー。でもその自由がかえって人を傷つける。体育の授業は本当に消えればいいと思う。
授業も終わって休み時間。これいらない。休み時間なのにみんな休まない。これじゃただのおしゃべりタイムだよ。次の授業が理科室だったりすると、なんかもうどのタイミングで理科室いったらいいのかわかんなくて困る。全体的に人が減ってきたらいくようにしてるけど、それでもなんだかなあって感じだ。トイレいくとしても一人でいくことになるから、トイレに入ってから同じクラスの人とかいるとちょっと気まずい。相手はなにもきにしてないけど、僕は気まずい。
そんな授業や休み時間を越えると、昼休みという、またさらに恐ろしい時間がある。昼食を食べるにしては多すぎるこの時間。僕は授業が終わったときの体勢のまま、かばんから弁当をだして、食べる。食べ終わったら、トイレにでもいって、戻ってきて寝る体勢にはいる。もちろん眠れない。でも5時間目が始まるのと同時に眠たそうなジェスチャーしながら起きる。自分でも悲しくなるよ。
すべての授業が終わって、帰りの挨拶も早々に、誰よりも早く教室をでて、学校を出て、自転車にのり、家に帰ってきた。本当に学校は疲れるよ。この先楽しいことなんてあるのかな。あろうがなかろうが僕はただこの毎日を繰り返すしかないんだけども。まさかこんな高校生活だとは、子供の僕には想像できなかっただろうな。