Angel Beats! 解説

「AB最後らへんがマジ音無クズでワロタ。すごい失速感だった」なんて抜かすアホウがいます。なんでも他の人たちを成仏させておいて、自分だけ天使ちゃんとちゅっちゅしようとしたあたりがクズなんだそうですが、その解釈ではABを全く何も分かっていないのだと、僕は断言します。
大体「成仏させておいて」という考え方が気に入りません。「成仏=死」と考えて、死なせるとかマジwww他人死なせておいてマジwwwおまwww、だなんて考えているのでしょうか。成仏っていうのは最高に素晴らしいことなんです。普段から「自殺したいなあ」と考えておられるような、ふれんどりの賢明なる読者諸氏であれば自然とお分かりになるはずですが、人生イージーモードもしくはノータリンの方々にはわからないのでしょうかねそこのとこの感覚が。


結局全人類にとっての幸福なんてものは死以外によってもたらされ得ないのだと――これは僕の持論かつ極論ですが。そういった感覚なしには、他人を成仏させることの意味がわからないのでしょうか。とにかく音無のことをクズ呼ばわりする人間を僕は認めるわけにはいきません。


僕の言いたいことは以上で全てなんですが、ところでたしかにABにはよくわからない点がありました。そこでせっかくなのでグーグル先生に聞いたり考えたりして、というお話だったのさ、と言えるように僕なりにABを解釈してみました。解説は主にABのあの世界に関してです。

概略
  • Angel Beats!(以下AB)の世界は、悔いをもって死んだ人が、その悔いを晴らす(解消する)ための場所
  • ABの世界で成仏するのは本人にとって何よりも素晴らしいこと
  • Angel Player(以下AP)の開発者は音無ではない
  • 一番最後の音無らしき人と天使ちゃんらしき人のシーンは、天使ちゃんの夢
解説

ABの世界は、天国へ行く前に未練を晴らす(解消する)ための場所。舞台が学校なのは学校関連の未練がある人が来るところだからだろう。(学校なら解消しやすいから。悔いのある人はそれぞれ自分の未練に対応しているここと似たような世界へいくのではないかな。)

しかし「記憶喪失」だと未練がなくても迷い込んできてしまうことが「まれに」ある(音無のように)。「そのとき」にバグ(愛)が発生する。(カヲル君――12話のコンピュータルームの人を便宜上こう呼びます――曰く)

まず世界には学校という環境と、学校たらしめるためのNPCが存在していた。これはこの世界の前提条件である。そして実際にたくさんの人がやってきて、それぞれ未練を晴らして天国へ旅立っていった。成仏することはとてもいいことなので、これはとてもいい循環です。


あるとき記憶喪失の人間がやってきて、バグ(愛)が発生する。しかしその人が、未練をもってやってきた人に恋をしても、相手の未練が解消されれば、相手は成仏してしまう。となると、もうどうしようもないので、記憶喪失の人も自ら成仏する。(逆に自分の意思で成仏が可能な点から考えて、一般的には成仏が(悔いさえ解消されていれば可能な)良いことだとわかる。)

このようにしてABの世界はうまく回っていた。


しかしあるときコンピュータに強い記憶喪失者がやってきた。この世界では意思の力かなんか知らないけど、土から武器とか作ることができる。それをコンピュータ上で実現できる装置を彼は開発した。これがAPであり、コンピュータで現実を改変することができる。

そして彼もご多分に漏れず愛を覚える。だけどまあ、相手は成仏しちゃったんでしょうね(彼女を待ち続ける、という点から)。そこで彼は、

「愛が芽生えると、永遠にキャッキャウフフできる世界(楽園)になってしまう。いやいやここは卒業すべき場所だからそれはアカン。つまりこの世界にとって愛が芽生えるっていうのはバグみたいなもんだよねもう。」※楽園になるには愛し合う二人がどちらも記憶喪失である必要がある。そうでなければどちらか一方は生前の悔いを永遠に心のうちに潜ませることになるので、楽園とはいえない。→しかしこの開発者の場合は、そうではなかった。相手は未練があってこの世界に来た人だったので、成仏してしまったのだ。なのに可能性的には、記憶喪失同士のカップルが生まれる可能性がある→楽園化。そんなの嫌だ! むかつく! 俺はひとりで寂しいのに! ここは卒業すべき場所なんだよプンスカ!

というひねくれ根性から、愛が芽生えると問答無用でNPCを影化させて、人間たちをもNPCにしてしまうようにする。おまけに彼は輪廻転生感を持っていたのか、「もしかしたら彼女がまたやってくるかも……」と妄想する。そのため長い間うじうじと彼女の再来を待ち続ける。(この間、彼はたしかに「愛を知っている」が、だからといってずっとバグ解決用のプログラムが走っているとは考えにくい。つまりカヲル君の「世界に愛が芽生えました」というのは、「この世界の誰かがこの世界の誰かを愛しはじめました」という意味だと考えられる。)

でもあんまり彼女が来ないもんだから、発狂して自分をNPCにしてしまう。(後に明らかになる「気合を出すとNPC化からもどってこれる」といった打算はなかったようだ。あったのなら発狂する前にそうする。正気でいられなくなるまで粘った末のNPC化なので、まあ意識を取り戻すようなことはないだろう。発狂してるんだもの。BAD END)


で、この事件が「遠い昔」になるぐらいの期間、記憶喪失者はこの世界にやってこなかった。なんていったって「まれに」起こることだからね。そしてしばらく人は本来のシステムに則って天国へ向っていった。
ちなみに、もしこの間に記憶喪失者が来てしまったとすると、(カヲル君の「記憶喪失で迷い込んでくることがまれにある。そのときにそういうバグが発生する」という発言から)バグが発生するので、バグ解決用のプログラムが走ってしまう。するとそのときABの世界にいる人間がNPC化されてしまうわけだが、それはカヲル君の「一人だけ、そのプログラマです」という発言に矛盾してしまう。


そしてAB第1話。すんごい久しぶりに記憶喪失者、音無がやってくることで話は始まる。音無がやってきたころ、ABの世界ではなんとか戦線という集団がワイワイやってる。この世界にやってきた人間は、本来であればABのシステムに取り込まれて、自然と生前の悔いを晴らすことができるのだが、ゆりっぺの作ったこの戦線がそれをさせない。

ゆりっぺがなぜこのような戦線を作ったのか。それはゆりっぺのこの世界に対する根本的な誤解に起因する。生前の兄弟たちを殺されたトラウマや姉(上に立つもの)として義務感とかいった気持ちと、ABの世界で人間が消えていく事実への恐怖などから、「私たちは決して屈しない」というように考えたのではないでしょうか。まあ僕ゆりっぺそんなに好きじゃないんでどうでもいいんですけど大体そんな感じでしょう。実際のところは、ABの世界で人が消えるのは紛れもなく成仏するからであり、それはとてもいいことだから積極的に行うべきであるはずのことなのに、それを単なる消滅と誤解したところがゆりっぺの問題点だったわけです。


でまあ音無が頑張ってみんなを正しい道、つまりは成仏へ導く。これはクズであるどころか、神のような行いです。(そういう意味で、仲良くしたいという形で他の人を成仏させられたかもしれない天使ちゃんはマジ天使といえるかもしれません)。
問題があるとすれば天使ちゃんに対して一緒に残ろうといった点。この世界にいる以上、彼女も何らかの悔いをもってこの世界に来ているわけで、一緒に残ることを選択させるのは、その悔いを一生晴らさないでくれと言うことと同じことです。それでも幸せにしてみせると思ったのかもしれませんが、やっぱり酷であることに違いはありません。ただまあそういった妥協は普通の人間関係であればよく起こりうることで、それだけでクズ呼ばわりされるのはおかしいと思います。にんげんだもの
結果的には天使ちゃんの後悔は「ありがとうと言えなかった」という、なんとまあ平和で可愛らしいことだったのですが、やはりこの世界に来るだけの思いの強さはあったようで、感謝の気持ちを伝えられずにはいられない天使ちゃんは「ありがとう」と言ってしまいます。
思いの強さ故に出会えたのに、思いの強さ故にまた別れなければならなかった。なんと悲しいお話ではありませんか。ただまあややこしすぎるので、僕としてはゆいにゃんの話の方が普通に泣けましたね。


一番最後で音無らしき人が天使ちゃんに触れようとするシーンは、天使ちゃんの夢です。ゆいにゃんの時と同じです。青い髪の人とゆいにゃんは現実世界では接点がなかったのに、窓割ったボール拾いに行ったとかそういうシーンがあったのは、あれが夢だからです。こうだったらいいな、っていう夢が、成仏するその瞬間に脳裏に浮かんだんでしょう。

この場合では天使ちゃんの「心臓をくれた人にありがとうと言いたい」という思いが叶う夢になるはずなので、あれは「ありがとうを言うための待ち合わせに音無がやってきて声をかけるシーン」なんでしょう。
成仏っていうくらいだからそれくらい気持ちよくないといけないよね。

あのあと音無が成仏したかどうかはわかりません。ご想像におまかせしますっていうやつでしょう。


以上。

あとがき

なげえ。でも大体合ってるんじゃないかと思うんですがどうでしょう? つまり矛盾のない、自然である、という意味において。

考えているときに気になったのは、12話ゆりっぺの「この世界で愛を覚えたならすぐに消えるはずだ」といったようなセリフです。これは初めて見たときにも「え? そうなん?」と思いましたが、ようするにダウトなんでしょうね。そのセリフに対してカヲル君は何も言ってませんし、大体、音無消えてないですもの。ABでは、登場人物のABの世界への誤解も含めて語られているので、誰が言ったことなのか気をつけないと、すぐ登場人物と同様にABの世界を誤解してしまいますね。


最後に。こんなふうに「俺はわかってるんだぜ」というオナニー日記を書ける点においても、ABはやはり面白い作品だと思います。天使ちゃんぺろぺろ。僕はこんな日記より天使ちゃんのオナニー日記を読みたい!